1枚のシングルCDにワンマンライブの無料招待チケットをつけて、55日間で400枚売り切る。
このプロジェクトのゴールだったShibuya WWWでのワンマンライブは、公演日前から急激に感染拡大してしまった新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、やむなく開催中止となった。
たくさんのファンが心待ちにしてきた想いを汲んで、誰もが視聴できる無料生配信を導入し、同日同会場で自身初の無観客ワンマンライブとして生まれ変わった。

2020年3月23日 Shibuya WWWにて、中原くんの「密会-無観客ライブ-」が行われた。

Shibuya WWWは、シングルCD「エサ」を55日間で400枚完売した暁に購入者を無料招待するという企画「#中原くん55日戦争」のゴールにしていた場所だった。

本来のライブは新型コロナウィルスの感染拡大防止のため惜しくも中止となったが、ライブ配信チーム「mahocast」の協力により、CD購入者だけにとどまらず誰もが視聴できる無料生配信を導入し、会場にはバンドメンバーとmahocastチームと関係者、そして中原くんのみの無観客ライブに変更となった。

真っ暗なステージに、禁断少女のオリジナルアレンジのSE。

この日のために準備してきた、この日初披露のSE。今までのライブに来ていたファンなら初めて聴くSEにきっとざわめくだろう。期待に満ちた手拍子が音をかき消すようにだんだん大きくなって会場を包んでいったことだろうと想像する。

これまでの準備を思うと、正直悔しいと思わずにいられなかったが、SEをぶった切って飛び込むバンドサウンドの勢いにそんな気持ちはかき消された。

中原くんの真骨頂、思いっきり爽やかで暑苦しくてロマンチックな【タミフルスターダスト】からスタート。

駆け抜けるようなイントロにかぶる全力の “ワンツー!” の叫び声に、いつもと変わらないはしゃぐ客席が見えた気がする。
圧巻のパフォーマンスに思わず拍手を送ってしまった。

そこから【君カノ】が続き、底抜けにハッピーで楽しい雰囲気にどんどん熱が増していく。
普段なら客席を巻き込む “フッフー!” の掛け声も、この日に限っては画面の向こうで参加してくれていたのだろうか?

上手ギターのソロは視覚的にも楽しかった!あれは光るピストル?光線銃?とにかく派手でおちゃめでとっても楽しくて、ライブに引き込まれる。

最後は生配信ならでは、カメラを独占して “渋谷から全国の雌豚、雄豚に愛を込めて!” と叫び、“君が好きなのさ大好きなのさ” と歌った。

 

今回のワンマンライブは、2019年10月5日からスタートして55日間、SNSで「#中原くん55日戦争」のハッシュタグをつけてファンと一緒に駆け抜けてきたプロジェクトのゴール。「エサ」という1枚のCDを持っている全ての人と一緒に作り上げたワンマンライブだ。

このプロジェクトについて彼は、 “今までの俺じゃ考えられない、ちょっぴり過酷で、ただめちゃめちゃ楽しかったイベント” だったと語った。

“無事今日、音楽を届けることができました。本当にどうもありがとう!”

今回の挑戦におけるファンへの感謝を伝え、 “そんなお前らがいるからこそ” という言葉からそのままメロディーをつけて “僕は今日も歌うのさ” と歌い始めた【僕は今日も歌う】

あたたかいオレンジ色の照明に照らされて満面の笑みで歌う中原くんが幸せそうで胸が熱くなる。

“この声が距離を超えて誰かの心潤せる日まで”。この日のシチュエーションにぴったりだった。

 

パワフルなドラムソロから続けて始まる【メテオストライク】
“馬鹿が溜まるセンター街” 、大都会のド真ん中渋谷の “黒い箱に響き渡る”  “やけに甘ったるいメロディー” がたくさんの人の元に届いている。

今回のバンドメンバーは、「エサプロジェクト」の始まりの日「月見ル君想フ」でのライブを共にしたメンバーだという。

ギター:渡辺淳
アルバム「カラフルP0pきゃんでぃ♡」をはじめとしたCD楽曲の編曲も担当している。

ギター:イワブチコタロウ
中原くんが所属する「nanoha project.」の同期でもあるシンガーソングライターでありギタリスト。

ベース:大将
筋トレの話ばかりな気がするが、譜面に落書きがしてあったり、なかなかおちゃめなベーシスト。

ドラム:篠田
中原くんとの組み合わせはすっかりおなじみ。今回はもちろんクリアファイルではなくドラム。この日のライブにあわせてLED内蔵のクリアなドラムセットを用意して来た。

 

最後に紹介されたドラム篠田のギラギラ光るLEDドラムのソロがシャッフルリズムへ変わり、悲鳴のようなギターが鳴り響き、ステージは怪しくバックライトに照らされる。

迫力がありながらジャジーなアレンジが効いたバキバキにかっこいい【がっこう大好き!】では声を歪ませて吠えまくり、一転して ”ベイビー” と甘くやわらかく歌い始める【カラフルP0pきゃんでぃ♡】が続く。

きらきら光る汗、歌い出したくなる気持ちに呼応するかのようなコーラス、色とりどりにころころと表情を変えるステージすべてに目を奪われる。

ライブ中には「リアクションボタン」でのアクションを求める、mahocast配信ならではの煽りも。

たくさんあるリアクションボタンの中でも中原くんは「斬新」ボタンが一番好きとのことで、 “今のうちに斬新ボタンを押してくれ!チェックしてやるぞ!!” とステージ上でスマホから配信画面を覗く。観客とリアルタイムで感情を共有するのは実際のライブと変わりない。

“ここから先はアッパーなナンバーを用意した” と宣言して始ま、るかと思いきや、 “その前に一旦CM!”
中原くんの故郷である伊東市の【伊東マリンタウン】に宛てて勝手に作ったCM曲。

一瞬笑った隙を突いて【コピーアンドペースト~既視快晴~】のファンキーなリフが切り込む。タイトなリズムで繰り出される轟音に身体が揺れる。

続く【さらば】でステージが真っ赤に染まり気炎を揚げる。この2曲のコンボはずるいでしょ、という繋ぎ。

 

興奮の2曲を終え汗を拭きながらMCはまた「55日戦争」達成への感謝へ。

”お前らにライブのステージを見せられることも、今ここにいる人たちにWWWに立てている事実を示せていることも幸せなこと”

“もしこの中に今心の底から笑えない人がいたら、いつか笑える日が来たらまた俺に会いに来てよ。ライブ見に来てよ。その時まで俺は不格好ながら歌っています。”

“変わらずここにいるからさ” “その時は笑顔で会いたいね” と約束をするようにまっすぐ前を見つめて歌う【雨がやんだら】に続き、【馬鹿】の人間臭さが心に馴染んですっと入ってきた。

彼の歌詞の魅力は「俺にもこういうところあるからあんまり焦るなよ」と言うように、駄目な部分ごと肯定して寄りそうところだと思う。

彼自身の駄目な部分への諦めや苛立ちを歌いつつも、それを認めてどうしようもない自分ごと愛している。

MCでは上京前の彼自身のことを振り返った。
仕事から帰り不貞腐れて部屋で一人ギターを弾いていたある日、 “(ギターを弾く音が)近所迷惑なんで静かにしてくれませんか?” という苦情がポストに入っていたという。

【真 近所迷惑】
“お前らが俺の音楽に価値をつけてくれた。”
“俺をあの街から引っ張って来てくれて本当にどうもありがとう。”
と伝えて歌い始めたこの曲。

「近所迷惑」というタイトルが指す彼の思い出を知ってから聴くと感慨深い。

あの頃の彼の音楽の一番の共感者は彼自身だったのかもしれないけど、今は確実にたくさんの人々が彼の音楽に耳を傾け心を震わせている。

続く【不貞腐横丁酩酊節】
”こんな日々を好き好んで過ごすのでしょう”
嘲笑まじりに自分を認めて前を向くまでの過程を見ている感覚になった。

”「音楽」は俺自身を救ってくれて、俺の世界を広げてくれた魔法”
と語り、あの頃からかき鳴らし続けてきたアコースティックギターを手に取った。

弾き語りで歌ったのは【みずあび】【エサ】【日記】の3曲。
ここまでのバンドサウンドから打って変わって音と言葉が静かに響き、時間が止まったような感覚になる。

特に【エサ】“ここに来るまで一緒に歩いてきた曲” と言う通り、今回のワンマンライブに一番密接した一曲。
彼の強みの一つである歌唱力を存分に発揮し、とろけるようなメロディーに乗せて情感たっぷりに歌い上げた。

【日記】はインターネットをメインに活動していた頃の彼の「知る人ぞ知る」名曲。
荒々しくかき鳴らすギターと叫び声を締めくくる “なんでもないです” というか細いセリフに、ネット時代の彼が重なって見えた。

あの頃の彼を知っている人はどのぐらいいるのだろうか?

“最愛のお前らに問う。そこから見える俺はかっこいいですか?こんな俺のことを愛してくれますか?”
あの頃と、ネットと、ライブハウスと、今がリンクした。

“自分は「闇」だと悲劇のヒーローを気取って、「光」になっている誰かに僕を提供し続けなきゃと思っていた” と吐露し歌い出す【没落】。この曲もネット時代に反響を呼んだ一曲だ。

ここからまたバンドが入り、エモーショナルな轟音が彼を飲み込んでいく。

“こんな光を当てられてるの最高よ。悲劇のヒーローじゃねえ、奇跡のヒーローよ” と、「闇」側だと自己認識して諦めていた過去の彼が「光」側になれた喜びを伝える。
“お前らが俺をあの街から引っ張って来てくれた” という中盤のMCを反芻する。

苦渋の決断のもと無観客配信ライブに変更したことに対して、 “みんなが作ってくれた道筋に乗ってここまで来れたけど、みんなを連れて来れなかった。本当にごめんなさい。” と彼は深く頭を下げ、  “まだまだやらせてくれ。お前らが俺についてきてドキドキするようなことをする。絶対に裏切りはしねえ” と続けた。

“戦いたい街があります。” その言葉から続く【東京】。独白のようなピンスポット。

インターネット、上京、たくさんのライブ。ファンと仲間に出会い、期待を背負って為し得た55日間のチャレンジ。そのゴールだったShibuya WWW。
成功ばかりで歩んできたこれまでではなかったけど、自分を見失わずにこれたことは誇らしいこと。

“かっこいい大人になりたいよ。ちゃんちゃらおかしいだろう?”
この曲を書いた当時の彼が見たら驚くような舞台に彼は立てている。

間髪入れずに始まったのはライブの定番曲【禁断少女】

この曲がないと終われない。バンドメンバーのステージングも開放感に満ちて、間奏部分ではギターとベースの3人がフロントを乗っ取るサプライズもあった。

キラキラした爆発力を失速させることなく締めくくり、 “1日でも早くまた面と向かってお前らと馬鹿騒ぎができるように” と叫んだ。

会場は無観客だったが、最後まで全てのカメラに向かってやり遂げた素晴らしいライブだった。画面の向こうで見つめてくれるファンの存在を信じていなければこんなに良いライブができるはずがないと思う。
たくさんの観客の存在が彼らをかっこよくさせていた。

“お前ら立ち止まるんじゃねえぞ!俺も進んでくからな!これからも音楽で気持ち良いこと続けていこうぜ!良い夢見ろよ!”
約束をするように叫び、笑顔でステージを去った。

無観客のライブハウスから、55日間のみならずこれまでのアーティスト人生すべての過去と今を繋ぎながら、一人一人の画面へ鮮やかに魔法をかけた中原くんのライブ。

次は満員のライブハウスで、一人一人の「あなた」と一緒に楽しみたいと強く願った。

 

写真:ossie
配信協力:mahocast


2020年3月23日(月) 19:00
「密会 -無観客ライブ- @Shibuya WWW」

【セットリスト】

タミフルスターダスト
君カノ
僕は今日も歌う
メテオストライク
がっこう大好き!
カラフルP0pきゃんでぃ♡
CM(伊東マリンタウン)
コピーアンドペースト〜既視快晴〜
さらば
雨が止んだら
馬鹿
真 近所迷惑
不貞腐横丁酩酊節
みずあび
エサ
日記
没落
東京
禁断少女


中原くん

Twitter:中原くん 中原くん[Staff]
HP:http://nanoha-project.com/nakahara-kun/