自身最大規模の会場、初めてのクラウドファンディング、フリーライブ。ファンと一緒に作り上げた一日を振り返る。
ーーまずは、1/7 Zepp Diver City無料ワンマンライブお疲れ様でした!
ありがとうございました!
ーー遡ると、Zepp Diver Cityでのワンマンの発表とクラウドファンディングの発表は去年8/13の渋谷WWW「たからものツアー」のファイナルの日だったんですね。
そう。8/13のWWWのとき。あー!そうだこれ、発表の文章と前日の文章で同じところに同じ漢字の訂正入れてる。笑
あーほらほらほら!笑
ーーライブ中のMCでの発表だったんですか?
「売れないミュージシャンのうた」の前のMCで「クラウドファンディングで力を貸してください。こんな僕ですがZeppまで一緒に行きましょう。」って発表したのが最初。
その日の夜にTwitterで直筆のメッセージを出して…。懐かしい。
ーー8月から約5ヶ月のプロジェクトだったんですね。
怒涛でしたが…。笑
クラウドファンディングが9/30で締め切りだったの。ちょうど台風がきてて、GO ARROUND JAPANの日だった。
GO ARROUND JAPANのライブで越生に行ってたんですよ。その日までに目標金額が達成できなかったらもう越生に来てるお客さん全員にビラ配りしようっていう話もしてて…。
でもなんとか達成できた。お客さんみんなも最終日まで見守ってくれてたんだと思う。
ーーそもそもクラウドファンディングをやろうという経緯は?
「Road to Zepp」っていう企画自体が、クラウドファンディングを扱っている企業CAMPFIREとZeppグループの共同企画なんだけど、Zepp側から「ネクストブレイクアーティストとして井上緑をプッシュしたい」と声をかけてくれて挑戦することになったんです。
ーーZepp側からの代表アーティストとしてのオファーだったんですね。
でも始めはクラウドファンディングに対して不安が大きかったです。
ーーそれは何故ですか?
正直あんまり良いイメージがなくて…資金集めをするなら自分で音楽で稼ぐべきと思ってたし。
ただそれが、やっていくうちに変わっていった。
沢山の人の応援や声援がお金っていう目に見えるものに変わって、みんなで一つの目標を目指して作り上げているんだっていうことを改めて思ってイメージが変わって、なんとか成功させることができました。
ーー葛藤があったからこそ、リターンの内容にも悩んだでしょうね。
リターンの内容はチケット代に見合うものにしようと思っていて。ライブ自体のチケット代が3千円だとして、一緒につく物は、みんなが絶対喜んでくれる物にしたいと思って用意したんですけど、超大変でした。笑
ーーとても魅力的なリターンでしたよね。思い出になるというか「この日に来た」という証拠みたいなものが残る物にしたい気持ちがこもっているのかなと思って見ていました。
そうそうそう。見返して「あの日」が思い出されるものにしたかった。
ーーミニギターができるまでの経過報告も見ていて楽しかったです。塗装したりとか。
既存のギターの塗装剤を剥がして実際自分で塗装したんです。
見た?かわいいでしょう!
僕が持ってるのは試作品だから00なんです。リターンで贈ったお客さんのギターも裏にナンバリングをしてあります。
ーーもうこのギターの色が「井上緑のギター」として定着しましたね。
実際普段からギターを弾くお客さんの手にも渡ったんでしょうか?
このリターンが5人なんですけど、みんな練習中だったり、これを機にギターを始めてくれたりしたみたいで。
ーーかわいい!!愛おしいですねそれは…!
めちゃくちゃかわいいじゃないですかそんなの!
みんなTwitterに動画を上げてくれたりしてて嬉しいです。
このギターも僕のギターと同じように塗装がはげるような塗り方をしているので、どんどん弾いてボロボロにしてくださいっていう話をしました。
ーー「1日スタッフ」というリターンもありましたね。これはファンにとって本当に貴重な思い出になったんじゃないでしょうか。
お客さんが関わって一緒にその日を作れる何かをリターンとして用意したくて。
当日は同じ井上緑チームとして、今日を一緒に作った証としてスタッフジャンパーを作って配布して、それを着て手伝ってもらいました。
ーー当日昼にTwitterを開いたらもう会場にいるお客さんがいて、オープンよりだいぶ早い時間だったので驚いていたら1日スタッフのお客さんたちで。
スタッフとの集合写真やスタッフパーカーを着た後ろ姿の写真が上がっていたり喜んでいるツイートを見て、全員で作っているんだなと感じてスタートまで気持ちが高まりました。
クラウドファンディングがあってこそ決行できたライブだったし、みんなで作り上げたものっていうのを一番大事にしたかった。この日に一緒にいたっていうのも誇ってほしいと思っていたし。
ーー実際Zeppは立ってみてどうでしたか?
うーーん…あんまり思い出せない!笑
ーーそうなんですか?笑
準備まではすごい覚えてます。リハとか袖にいるときとか、ステージに立つまでめちゃくちゃそわそわしてたし。お客さんが入ってからのZeppは「いっぱい入って良かったな」と思ったことぐらいしか覚えてないです。次の日起きて集合写真を見て「すごくねこれ!?」と思いました。笑
でも一つ思ったのは、歌うっていうことに関してはどんな場所でも変わらないんだなって。実際大きい会場でライブをしてみて、こういう場所でいっぱいやっていかなきゃ身につかないことがあるのを実感したうえで、歌うってことに関しては大きい場所も小さい場所も本当に変わらないんだと思いました。
お客さんがいてくれて僕がいて、ライブってのは成立する。これはどこでも変わらないなって。
ーーステージからの景色はどうでしたか?
すごく印象に残っています。ステージに立って、「つぶやき」から始まって。でもそれまで客席を見ないようにしてたんです。だってお客さんが全くいなかったらどうしようって怖くて。フリーライブだからチケット予約もなかったし、当日素っ裸でステージに立って見上げた景色が僕の結果だから。
始まる前に、当日ローディーをしてくれていたコタロウに「どうしよう4人ぐらいしかいなかったら」って言ったら、コタロウが「大丈夫です緑さん、5人いました」って。笑
ちらちら様子を見に行っては「今6人です!」「まあ6人いれば大丈夫だろー!」とか冗談言い合ってて。でもステージに出て見上げた景色は、もう。すごかった。
日立の路上ライブから初まって、四谷天窓を埋められるようになっても、現状そこから脱してないわけじゃないですか。でも井上緑はこのZeppに立ったっていうのは誇って良いなっていうのを、あの瞬間広がった景色を見て思いました。こんな歌うたいになったぞって。
ーー今までフリーライブもワンマンライブも沢山経験してきた緑さんですが、クラウドファンディングがあったことでお客さんもこの日に関してはまた違った目線で見ていたかもしれないですね。
のし上がった感じはすごい。お客さんからもそう見えてたんじゃないかな。
ーー私も見ていて、小さい会場でも大きい会場でも変わらないって、本当にその通り思いました。緑さんのライブはお客さん一人一人に語りかけるような印象があるんですが、そのスタイルが変わらなかった。
一度バンドのライブでZepp Diver Cityに行ったことがあるんですが、その時は機材があるからあんなに広いステージだと思ってなかったんですよ。
あの日ギターとマイクだけが照らされたステージを見た時にステージの広さに驚きました。
後から考えたらめちゃくちゃ恐ろしいですよ。
ーーあんなに沢山のお客さんが緑さん一人を見ていたんですよね。客席から見てもあんな景色はなかなかないと思います。
Zepp Diver Cityで弾き語りワンマンをやったのは僕が初めてだったみたいですしね。
ーー初めからソロでのワンマンの予定だったんですか?
そうです。でも、バンドじゃなくて良かったと改めて思います。
バンドでやるのも楽しいけど、自分一人の弾き語りが原点だし、日立で路上ライブをやっていたときからずっと積み上げてきたスタイルだから、初めてあの大舞台で勝負できるという機会で、僕が戦えるのはこれだと思っていて、一人なことに安心はした。
ギター一本あれば十分っていうか、むしろそっちの方が心強い。歌うことに関してはあまり気負いしませんでした。
ーー一人でも?
一人だからこそ。
ーークラウドファンディングのリターンの一つだったラバーバンドについて、「井上緑がいつか武道館でライブをやるときにご招待するためのグッズです」とありますが、これに関してはどんな思いが詰まっているのですか?
夢を持つっていうのがすごく重要だなと思って。
井上緑がZeppでライブをやる日に、「いつか武道館でライブをするときの招待券」としてラバーバンドを受け取るってめちゃくちゃ夢があるし、当日だけじゃなくその先のものも期待させられるようなリターンじゃないですか。それってすごくなのプロらしいというか、井上緑っぽさもあるなと。伸び代を感じさせるというか。発展途上感。未完成感。みんなで一緒に行こうやって感じが。
ーーZepp Diver Cityを目撃してからの武道館への期待は大きいでしょうね。
計り知れませんね。
ーーZeppの感想を書いてくれているお客さんのブログやTwitterを見ると、「これなら絶対武道館に行ける」と武道館に触れている人が多くて、これからの期待を感じます。
Zeppは通過点という感じがする。
自分のワンマン前に竹原ピストルさんの武道館公演を見に行ったんですけど、その影響もあって自分のライブも変わったかもしれないです。
やばかったー…良すぎた…。号泣してしまったんですよ。
ーー良いライブだったんですね。
自分のワンマンでは、お客さんの泣いてる声とかはいつもよりは聞こえなかったけど、最前列から後ろの方まで、顔や動きは見えたんです。その中で真ん中の列のお客さんがライブ中にガバって俯いたのが見えたんですけど、それが泣き崩れちゃったからだったことを後から知って。
こういうのを見て、ピストルさんのライブで泣いた僕と、僕を見てくれて泣いてくれたお客さんには差はないと思って、自信持って歌っていって良いんだなって思いました。
正直ピストルさんの武道館ライブを見た直後は「完敗した」って思ってました。上にこんな人がいて、自分はこれ以上音楽してて良いのかな?って思うぐらい圧倒的な弾き語りだった。
でも、ワンマンが終わってからはその気持ちがなくなった。僕も良いライブができた。
ーーセットリストに関しても悩みましたか?
正直今回、セットリストはちょっと重かったかもしれないです。笑
でも、Zeppでの勝負の日だからこそ自分の得意なことだけを詰め込んで「井上緑らしさ」を見せようと思って組んだセットリストでした。
お客さんは盛り上がったりしづらい空気だったかもしれないと思ったけど、みんなの顔を見たらそんなことなかったって自信を持てました。
ーー「一回みんな声出してみよう!」と投げかけた時間がありましたよね。
あの投げかけで「いつもの井上緑のライブだ」と思いました。大きいステージだけどあくまでも同じライブとして扱ってるんだなって。
カッコ良くした方が良かったのかな?とも思ったりもするけど、できればどんなところでも全員見渡しながらやりたいなと、ずっと思っています。ライブってそういうものじゃないですか。一対一がどんどん増えていっていっぱいになってるから。
ーー「みんなが地べたからこのステージに引き上げてくれた」と、発表のときもワンマンライブでも同じことを言っていましたね。
最近感じることがあるんですけど、「売れる人」と「売れない人」って最初から違うんですよ。いる場所が。
ーーそれは、気持ちの面ということですか?
気持ちも精神もそうだし、あと、レールがある。もう生きてる場所が違うのを感じる。
僕は多分「売れない」側のレールに乗るはずだったんですよ。けど「バカップル死ね」がTwitterでバズったのとか、いろんな人に出会ったりっていうイレギュラーがあって、脱線し始めてる気がするんです。それは僕の音楽を聴いてくれる人がいて僕が歌い続けていられたからで、僕を引き上げてくれたのはお客さんのおかげなんだなって。僕が今ここにいるのはお客さんのおかげなんです。
ーーずっと路上に居続けることもできるし、ずっと小さい会場で歌い続けることもできるし、何も変わらなくても何も責められないはずだけど、緑さんは目の前にいる人たちを大事にしてきたという印象があります。
ずっと見てくれているお客さんに次の井上緑を見せたいとか、この人たちが胸を張って「好きだ」と言ってくれるような人になりたいという気持ちは、今回に関してだけではなく何度も発言してきていますよね。恩返しのような気持ちがあるというか。
自分を見つけてくれた人や自分のことを好きになってくれた人たちに「井上緑を好きだって言ってて間違いなかった」と思ってもらいたいという気持ちがあるんだなって。
僕がメジャーデビューしたいっていう気持ちも、親が誰かにわかりやすく「うちの息子歌手なんです」って自慢できる人になりたいというところからきています。
でも例えば、ドサ回りでやってるミュージシャンの人たちもいるわけじゃないですか、僕はそっちにもなりたくて。
ーー先輩のミュージシャンにも沢山いますね。
めちゃくちゃかっこいいじゃないですか。でも、僕はわかりやすい結果がほしかった。ライブを始めるまではテレビで見れるミュージシャンのあり方しか知らなかったから、ギターを始めてライブに出てカッコ良い人たちに出会えて、その人たちから学んだものを僕が成長してメジャーに持っていけたらカッコ良くない?って思ったんです。親が僕のことを「歌手として音楽で仕事をしています」って自慢できるような人になりたいと思ったら、メジャーに行くしかないって思ったのが最初。
自慢できるような人になりたいんです。身近だったらなのプロのスタッフでも良い。「うちのアーティストがね」って。ちゃるさんでも良い。「緑がさ」。
そんな人になりたいと思った僕が唯一できるのは音楽だった。聴いてくれる人たちの限られた時間に僕を選んでくれたからには無駄にさせたくない。僕と関わったことが無駄になってほしくない。実らせたいなって思っています。
ーー今回のワンマンで、「私の好きなアーティストはここまで行った」ともう既に自慢してくれてる人たちもいますしね。
天窓のスタッフも全員真剣に見ていましたし、全員、自分の子供の門出のように喜んでいました。
めちゃくちゃ嬉しい。
天窓なんて本当に1からどころか0からお世話になってるんだから、そりゃそうだよね。笑
ーーあんなに大きなステージにたった一人で立ったのは誇りですよ。
最初はね、バカにされてたりもしたと思うんです。井上緑がクラウドファンディングでZepp?無理無理。人集まんないよ。そう言われていたかもしれない。
しっかりそれを覆すようなことをしたと思ってるし、だから改めて自信を持って僕のことを好きって言ってほしいです。
ーー緑さん自身は自信に繋がりましたか?
それがわかんないんですよね。でも、やったことが間違いないっていうことはわかりました。
ーーZeppワンマンを終えて、今までと心境の変化はありましたか?
それはあんまりないかも。でもやったから、やれたんだっていう気持ちはある。
ーーそれが自信じゃないですか。笑
笑
謙虚なのも良いことなんだけど少しぐらい調子に乗るっていうか、どっしり構えなきゃなって。それがカリスマ性なんじゃないかなって思って、ワンマンが終わってからツイキャスで試してみようとしたんだけど、なんか調子乗ってるみたいで恥ずかしくて。笑
ーーどんな話をしたんですか?
「お前ら自信持って良いんだよ!Zeppに立った井上緑が好きなお前らはセンスめちゃくちゃ良いぞ!」みたいな話をしたら恥ずかしくなっちゃって。笑
ーーそのぐらい言えることをしたじゃないですか。
井上緑を「地べたから引き上げてくれた」のはお客さんだけど、お客さんを「Zeppダイバーシティまで連れてきた」のは緑さんですよ。
天窓でワンマンだと50人ぐらいじゃないですか。その規模からみんな見てるわけで、それって超すげーからねって言おうとして…。
ーー「売れる前から知ってた」って自慢して良いよってことですよね。
恥ずかしくなっちゃった。笑
お客さんも自信持ってほしいし…僕も自信持たなきゃならないんだけどなあ…。笑
でも、自信を持っていこうって改めて強く思いました。これからどんどん上に登っていくぞっていう人間が自信がなかったら示しがつかないなと思って。
みんなを引っ張っていくっていうタイプじゃないけど、頑張ろうと思いました。
ーー今後の活動については変わっていくのでしょうか?
これを終えて特に見方が変わったとか次はこれをやりたいっていう話ではないけど、やっぱりお客さんみんなが自信を持って井上緑を好きでいてくれるように、僕も自信を持たなきゃなと思います。
そしてやっぱり、どこに行っても好きなように、素直に歌が歌えていけたらなって。
ーー「いつでも素直に音楽を」ですね。
いつでも素直な音楽を。いつでも素直に音楽を。
今後も自分の好きな歌を好きなように自由に歌っていけたらなって思いますね。歌うたいですもの。
写真:小笹竜馬
https://kosasa-ryoma.tumblr.com
井上緑
Twitter:@ryokkun_ryokkun/@Ryoku_inoue
HP:nanoha-project.com/inoue-ryoku/
—DISCOGRAPHY—
たからもの
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